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2020年4月1日
ほたるいか

「ほたるいか」を4月のテーマに!と決めてから、頭の中でいろんな料理を考えていました(漁期が決まっているから試作したくても手に入らないので…)。

そんな脳内シュミレーションがそのままうまくいき、そのハマった感とともにレシピになる料理がたまにあります。今回はまさにそんな感じ。悩んで出来上がるものに対して、写真もその気持ち良さが出たりして、楽しい瞬間だったりします。旬、シュ瞬!にはこんな料理がふさわしいのかもしれないと最後になって思ったりして…。

では、ここからは試作一発合格感を味わっていただくべく、僕の頭の中を実況風に、レシピ書いてみます!

まずは主役のほたるいか、自分の食べたい分量でと言いたいところだけど、目安としたら15はいくらい?春らしい菜の花はひとつかみほど合わせたいところ。あとは、パスタ、卵黄、オリーブオイルに醬油、塩こしょうを準備。

ほたるいかはボイルしたものが売られているのがほとんどだから、美味しく食べるひと工夫くらいは紹介しよう。ひとつずつ手に取って、骨抜きなどで目をポチポチと取り除く、これで口当たりがよくなり、食べやすくなるよね。面倒に思われるかもだけど、食材をちゃんと触って、美味しくいただくための下処理をすることは料理の楽しさのひとつ。これはやってもらいましょう。

さぁ、パスタをゆでてラストスパート。ゆで湯にたっぷりの塩を入れるのは、パスタに適度な塩気を付けるために重要なのでためらわずに。ゆで上がる1分前に、菜の花とほたるいかを投入してさっと混ぜ、タイマーが鳴ったら一緒にざる上げし、器へ。器に盛ってから味付けすればボウルもいらないからいいね。

オリーブオイルを全体にまわしかけ、足りない塩気(一人あたり塩2つまみ位)と粗びき黒こしょうを振る。最後に卵黄をのっけて醤油をちょっと。さぁ思い切りよく混ぜて食べてみる…(想像以上に)うまい!

こんな感じで手軽、でもそのわりにちゃんとして見えるし、すごく美味しいので本当にオススメです。 

最後に、今まで旬シュ瞬を読んでくださった皆さん、そして自由に連載をやらせてくださったスコープさん、ありがとうございました。これからもたっぷり中身のつまった「面白い」scopeを楽しみにしております。またいつか一緒に面白いことができたらうれしいです‼

ほたるいかの下ごしらえは丁寧にやるならば、足の付け根にある口と、軟甲(なんこう)と呼ばれる透明な背骨のようなものも、目とともに取り除くとカンペキな口当たりの良さに!といっても目がいちばん口当たりを悪くしているので、最優先は目を取り除くことだと思っています。それにしてもアラビアのAvecは使いやすく料理映えしてくれる器ですね~。

(c)冨田ただすけ
文・写真/冨田ただすけ

2020年3月1日

お祝いの料理によく出てくる魚と言えば「鯛」ですよね。紅白の色合いが華やかで縁起が良く、“めでたい”という語呂も重なることから、いまも昔も変わらぬ縁起物のお魚というわけです。

そんな鯛の旬は、まさにいまの時期からはじまります。春はお祝いごとも多いからタイミングはばっちり!

じゃあ、さっそくお祝いの席にぴったりのキリリとしたカッコよい料理を紹介しようか、とも思ったのですが、今回はちょっと肩の力を抜いた鯛料理にすることにしました。鯛の刺身を用意すれば5分もかからず出来てしまう、『鯛茶漬け』なんてどうでしょうか。

魚料理って難しいイメージもあるし、そのまま焼くか煮るかの選択肢になりがちだったり、胸を張って「楽しめている!」と言える人は少ないんじゃないかと思っていて。それなら、幅を広げるアイデアとして、「刺身をうまくアレンジする料理」を今回紹介できたらいいんじゃないかと。

刺身を使うってことは、火を使わないから時短になるのはもちろん、面倒だったり失敗しそうな工程が少ない、つまり魚料理入門編向きとも言えます。

それになにより、刺身をそのまま食卓に出すのとは違う特別感が出て、たまに食べると素直にうれしいと思うんですよねぇ。

作り方はいたってシンプル!一人5~6切れの刺身を用意して、ごま小さじ2を擂鉢に入れて半ずりにします。そこに醬油小さじ2、煮切ったみりん大さじ1/2を加えて混ぜたら、あとは食べる直前に刺身と和えます。

三つ葉の軸の部分をキッチンバサミで小さく切って加えると、香りも彩りもよくなるのでぜひやってみてほしいです。

最後に鯛茶漬けを美味しく仕上げるコツを少しまとめますと、まず、お茶漬けにかけるのはだし汁である必要はなく、お茶で十分美味しいと思います。ちなみに僕は濃いめの緑茶推し。また、鯛の刺身が冷たいので、鯛を山盛りにするとお茶漬けがぬるくなってちょっと残念…。なので、お茶を多めにするか、小盛で何杯かに分けて食べるか、温度に気を配ったバランスで盛ると良いと思います。

文中に「煮切りみりん」が登場しました。作り方は耐熱容器にみりんを入れ、600Wで30~40秒ほど加熱すればできあがります。鯛の風味はあんがい繊細なので、みりんのアルコールの香りを飛ばして無くしたほうが、仕上がりがぐっと美味しくなるのでぜひやってみてください。それから、薬味の三つ葉は、細ねぎやあられに置き換えても美味しいと思います。

(c)冨田ただすけ
文・写真/冨田ただすけ

2020年2月1日
しじみ

その日のご飯の汁物が“しじみの味噌汁”だと、娘が高確率で「おかわりある?」と聞いている気がします。天然の出汁かとか、体にいいとか、全く考えてないだろうから、ただうまいんだろうなぁ、こういううまさが好きなんだなぁと、一生懸命小さな貝の身を食べる姿を眺めながら僕は考えていたりします。

世の中に「うまいもの」はたくさんあります。僕もコンビニをうろうろして気になるものを買ってみるけれど、だいたい良くできていてうまい。そんな食品を手軽に買えることってありがたいなと思う反面、どの食品も見事にうま味が強いから、細かい加減が少し分かりにくくなっている気もしています。それじゃあせっかくの「食べる」という楽しみの幅を逆に狭めることすらあるかもしれない…とも。

たまにはシンプルな食べ物を、その素材ならではのうま味の強さ・余韻の残り具合・後味のすっきり度など、考えをめぐらせながら味わってみてほしいなと思います。あらためて自分の好みの美味しさ、うまみの加減の輪郭がはっきりして、料理や食事の楽しみ方のヒントになるはずなので。

それでは、ここからはそのシンプルなうま味たっぷり、しじみの味噌汁の作り方を簡単に。 500mlの水に昆布を入れて30分ほどおいて味をひきだしやすくしておき、火にかける直前に洗ったしじみを加えます。

火加減は弱めの中火くらいで、いきなり沸騰させるのではなく、じんわりとあたためていき、しじみと昆布から旨みを引き出します。沸いたらアクを丁寧に取り、昆布も取り出します。そこへ味噌大さじ2、酒大さじ1ほどを加えたら完成、むずかしいことはありません。仕上げには好みで粉山椒をふってください。

ちょっと専門的な話になりますが、昆布のグルタミン酸としじみのコハク酸の合わせ技で、【うま味の相乗効果】なるものが発動し、感じるうま味の強さが倍増すると言われています。もちろん昆布なしでも作れるけれど、口にしたときの飲みごたえも、余韻がありつつもすっきりとした後味も、どちらもかなえてくれるので、ぜひ一度おためしを。

水500mlに対してのしじみの分量は200gほど。また、しじみは冷凍するとうま味が増すよ!といたるところで聞きますが、確かにうま味は増すけれど、若干泥臭さが出てくることもあるので好みにもよるかなと。冷凍せずに昆布を合わせてうま味を倍増する、これがいちばんな気がしている冨田なのでありました。

(c)冨田ただすけ
文・写真/冨田ただすけ

2020年1月1日
新海苔

アルミホイルで包んだおにぎり。いろどりは良くないし、アルミホイルが絶対くしゃくしゃになるので、「映え」させるのはなかなか難しい。でも、今回僕が紹介したいのは、超おすすめ弁当とも言える、その「アルミホイル包みのおにぎり」です。

ラップに包んだおにぎりを持っていく人も多いけれど、比較検証好きの僕は、包むものだけ変えて数時間おいたおにぎりを食べ比べてみましたが、ラップよりもアルミホイルに包んでいたものの方が確実に美味しい!と思いました。

アルミの効果で保温もほんのりとされつつ、ゆっくりと冷めたおにぎりは、米もべちゃついていなくて、やわらかくなった海苔の旨味は濃く、味付けが塩だけでも味わい深いんです。

それに、おにぎりって、「お腹減った!米食べよ」っていう、ストレートな食べ物でもあるからか、かっこつけないのが似合うんじゃないかな。

参考までに僕の握り方を紹介すると、ご飯は炊きたて、海苔は全形を用意します。全形の海苔は正方形に見えて若干長さが違うので、長い側面を三等分にハサミで切り、ざらざらした面を上に乾いたまな板などに置いておきます。

ご飯を茶碗に取ったら、手を冷水に浸して温度を下げてから、清潔な布巾で軽く水気を拭き取り、塩を手の平に広げます。これをやっている間に茶碗のご飯が少し冷めるので、そうなれば三角に握ります。握ったおにぎりを海苔の中央あたりに乗せて、奥と手前からはさめば出来上がり。粗熱がとれたらアルミホイルに包みましょう。

はじめに「映えない」と書いてしまったけれど、ある意味とてもかわいいというか趣のあるものかもしれないと思うのは、駅のホームの学生がアルミホイルから取り出したおにぎりを食べているところを見かけたことがあるけれど、食べてエネルギーをチャージしているということが、分かりやすく伝わってくるんですよね。毎日を頑張ってる感じが、いいなぁと思うんです。

ちょうど今は新海苔の季節で、香り良く、やわらかめなのが特徴でもあります。ぜひ海苔の旨味たっぷりのアルミホイル包みおにぎりを鞄にしのばせて出かけましょう。

そんなわけで、おにぎりの海苔の好み(パリパリ派orしっとり派)を決めるのは、ぜひラップじゃなくてアルミホイルで包んだものを食べてからにしてほしい!なんて思っています。また、海苔は産地よって、味わいや香り、口どけなどの特徴に差があるので、いろいろ買って比べてみるのもいいかもしれませんね!

(c)冨田ただすけ
文・写真/冨田ただすけ

2019年12月1日
かわはぎ

スーパー散策が趣味でして、冬がはじまると、拡大した鍋つゆコーナーに必ず行ってみます。ほほぅ、このメーカーは去年のあの商品が売れず、差し替えてきたな…なんて思いをめぐらし、手を替え品を替え、新しく出てくる鍋つゆ商品を吟味します。

「トマト鍋」や「カレー鍋」が流行ったときには買って試してみましたし、それを受けて「これが白ごはん.com流のトマト鍋や!」と、カッコつけて家族にふるまったりもしました(笑)。こんな風に、家のご飯のバリエーションが増えることって、楽しくていいなぁと思います。鍋料理って、ちょっと気を抜くとマンネリ化しがちなので余計です。

さて、鍋料理で僕からひとつ提案できることがあるとすれば、冷凍もできて手軽だから、つい豚肉や鶏肉を鍋の具にすることも多いと思うけれど、それをごそっと魚介に置き変えてみませんかってこと。いつもとはひと味違う、クリアで旬のつまった味わいの鍋が楽しめるからです。

冬の時期は「かわはぎ」が特におすすめ。白菜や長ねぎなんかの淡白な野菜と相性ばっちりの白身で、骨から身もはずれやすくて食べやすい魚です。

野菜は、白菜、長ねぎ、大根と人参は柔らかくなりすぎないよう棒状に切ります。他には、きのこ類に豆腐やちくわ、それから、くず切りや餅巾着なんかも嬉しいかも。さっぱり系の鍋なので満足感のあるものや食べる人が好きなものを脇役具材としてたっぷりと用意しましょう。



まずは土鍋に水と昆布1~2切れを合わせ、昆布の味を出しやすくするため30分ほど置くので、その間に下ごしらえを進めます。かわはぎは1尾を半分に切って、鍋に湯を沸かし、身をさっと落として霜降りします。身全体が白くなれば引き上げて、後は他の具と盛り合わせておけばOK。ちょっとしたことですが、これで臭みが抜けるんです。

食卓についたら、大根、にんじん、白菜の芯、長ねぎだけを先に入れて火にかけ、沸いたら昆布を取り出します。あとは他の具材を入れ、火が通ったものから順にポン酢につけていただきましょう。鍋料理だと、プリッとしたかわはぎの美味しさが手軽に味わえるところがいい!

最後の〆はやっぱり雑炊かうどん。もし魚屋さんで「肝も入れとくよー」なんて嬉しい買い物ができていたならば、肝入りの味噌雑炊は美味しく食べやすいのでチャレンジの価値アリです。

かわはぎは下ごしらえで、ヒレをキッチンばさみを使って切っておくと、鍋で煮やすく、身も食べやすくなります。また、かわはぎを頭付きで購入できたなら、頭を切り落としてから、身と一緒に霜降りをして、鍋に一緒に加えましょう。美味しく食べることのできる身もたくさん付いていますし、出汁がより出るので〆の雑炊も美味しくなりますよ!

(c)冨田ただすけ
文・写真/冨田ただすけ

2019年11月1日
ぶり

煮物が上手に作れたらうれしい。料理の腕が上がった気がするし、あったかくて美味しい煮物が食卓にあるとやっぱりうれしいから。煮物って、豪華な食材を使わずとも幸福度を上げてくれる、いい料理だなと思ってます。

その反面、煮物と言えばちょっとハードルが高いと思われがち。そんなイメージは、失敗と成功を理由も分からぬまま闇雲に繰り返しがちなところからくるんじゃないかなぁ。なので、まずは少し頭を整理してから料理にはいりましょう。

煮物と一口に言ってもさまざまで、大きなポイントに「完成時にどのくらいの煮汁を残すか」ということがあります。

今回紹介するぶり大根は、筑前煮などと同じで、はじめの汁量から1/5位まで煮詰めた状態が完成形ですが、おでんや高野豆腐の含め煮などの汁気たっぷりの煮物もあります。

汁気たっぷりの煮物は、飲んでちょうどいい味の煮汁で、弱火でことこと煮含めるものが多く、汁が多い=具材に火が通りやすい。煮汁の味を具材にしみこませるのが得意な煮物とも言えます。

対して、煮汁を煮詰めながら仕上げる、つまり、具材に火を通すのに必要な量の煮汁は入れて、そこから汁気を飛ばしてちょうどよい味付けにする煮物は、徐々に煮汁の味が変化していく難しさがあります。

この違いをおさえて、いざ、旬のぶりのアラで作る「ぶり大根」を作っていきましょう。



先ほど書いた通り、ぶり大根は煮詰めていく方です。まずは鍋の底に切った大根を広げ、その上に霜降りしたぶりのアラを乗せ、たっぷりの酒と具材の高さの8割ほどの水を入れます。落し蓋をするから汁気は8割くらいで十分、煮詰めることを考えて水は入れすぎないように。

落し蓋をして火にかけ、沸いたらアクを取ってそのまま15分煮て、大根にしっかり火を通しましょう。

さぁここからが肝心の味付け。大根に少しでも味をしみこませたいので、砂糖→醤油の順で時間差をつけて入れましょう。まずは砂糖を入れて5分、醤油を入れて5分、さらに落し蓋を取って5~8分ほど煮て完成。汁気を飛ばしたいから、火加減は中火かそれより少し弱い位で。

作り慣れるまでは、調味料を控えめに入れて仕上がり5分前位に味をみて、好みの加減に調味料を足してもいいかも。初心者向きとは言えないけれど、美味しく煮詰めるぞ!という気持ちで、是非この冬のド定番和食に挑戦してみてください。

ざっと詳しい材料を!ぶりアラ500gを用意して塩小さじ1をまぶし、15分おいてから霜降りします。大根は1/2本ほど。鍋に具材を入れたら、酒100mlを加え、そこに水400~500ml位でちょうど8割ほどの高さになるかと思います。具材たっぷりなので、いつもの料理よりは火加減強めで、鍋底いちめんに少し煮汁が残るくらいまで煮詰めてくださいね。

(c)冨田ただすけ
文・写真/冨田ただすけ

2019年10月1日

今月は、「生鮭で作る自家製鮭フレーク」の作り方を紹介したいと思います。先月に続き、“既製品を食べ慣れているけれど、あえての自家製”シリーズです。これはもう、僕の趣味のようなものでして…またやってるな~くらいに流していただけたらと。ある時期色々な瓶詰めを次から次へとこさえていた僕は、妻から「何のために作っているのか、こんなに誰が食べるんじゃい」と核心をつく注意をされ、今はここぞという時に張り切って仕込むことにしていますが…。

年中多く出回っている塩鮭でなく、「生鮭」で作る鮭フレークは、まずは切り身にしっかり塩をふるところから始めます(200gに小さじ1くらい)。30分置いてさっと洗ったら、今度は熱湯で4~5分ゆでて火を通します。バットに広げて皮と骨を除いて身をほぐし、次はフライパンの出番。弱火で5~6分炒って水分を飛ばしながら酒と塩で味付けし、ごまをふり、さらに3~4分炒れば完成です。

そのままご飯のお供にもいいですし、アレンジ料理としては「ちらし寿司」もオススメ。酢飯にたっぷりの鮭フレークとせん切り生姜を混ぜ合わせると、それだけで美味い。上にのっける具材には、シャキシャキの塩もみキュウリと酢れんこん、旬の時期でもあるのでイクラしょうゆ漬けもいいですね。

うちでは僕がちらし寿司作りの担当。張り切って料理すると決めている日には、買い出しから料理作りがはじまります。娘は酢れんこんが好きだし、いっぱい準備するかな。妻は薬味を重視するタイプだから三つ葉たっぷりにするか。でも娘は三つ葉を避けたいはずだから、盛り付けの時に混ざらないようにやってみよう…、なんてことをカゴを持って考えるのです。

全く同じ材料でも食べる人のことを想像して、具材の大きさや盛り付けを変える。そうするとその料理をもっと好きになってくれるかもしれない。たったひとりに向けた気遣いや工夫も一緒に盛り込めるのが家庭料理の良さです。

特にありがたがられなくてもいいけれど、娘が大人になって、よくちらし寿司作ってもらったなぁ、と一瞬でも思い出してくれたら嬉しいな。「鮭とイクラだから親子ちらし寿司じゃん!」って思ったりしながら、3人で食べるにはちょっと大きい寿司桶に豪快に盛り付けてみました。

フライパンで炒る時に合わせる調味料は、酒大さじ1と塩小さじ1/2が目安。冷蔵庫で5日、冷凍なら1か月ほど日持ちするので、ぜひたっぷり作ってみてください(鉄フライパンで炒るなら、はじめに油小さじ1ほどを熱してなじませてからにしましょう!)。コラムに書き忘れましたが、切った三つ葉は、さっと湯通しして急冷し、水気をしぼってから使っています。

(c)冨田ただすけ
文・写真/冨田ただすけ

2019年9月1日
カツオ

いつもスーパーでふつうに買っているものを手作りしてみるというのは、なかなかオススメの料理の楽しみ方です。既製品は手作りに比べると余計なものが入りがち。なので自分で作ればより優しい味になることが多いし、食べるときも「どれどれ、どんな仕上がりかな」と、より繊細かつ慎重に味わうことになって、あらためて食材の味を感じることができると思います。

食べることは毎日のことだから、いつも手作りできるわけではないけれど、たまには小さな挑戦や発見があった方が単純に楽しいですしね。 さて、今月の食材「カツオ」は、9月がまさに旬で、「戻りガツオ」と言って脂ののったものが店頭に並びます。この時期にはお店でドドンとでっかいサクの刺身が売られ、自分で切ってね的な、セルフ特価になっていることも多いし、サクで買うと色々な料理に使いやすいからいいんです。

そんな新鮮なカツオの刺身をオイル煮にして、自家製ツナを作ろう、というのが今回の料理。オイル煮ってちょっとハードル高い気がするけれど、難しさもなくて、ちょっと気になる油がもったいないんじゃ問題も、心配ナシ!なぜなら油にも風味が移るからとても美味しくなっていて、ツナを食べた後にも炒め物やサラダなど、さまざまに使えるので。

まず、カツオの刺身は塩を全体にうすくふり、20分ほど冷蔵庫で置いておきます。時間がきたらキッチンペーパーで表面の水気をふき取り、鍋に入れましょう。そこへにんにく薄切りと黒粒コショウ少々を加え、油を注ぎ入れます((油は好みのものでOKだし、そそぐ量もカツオに8割くらい被れば十分)。

あとは火にかけてフツフツなれば弱火にし、15分加熱します(2~3回上下を返したり、鍋を傾けて油を均一にいきわたらせたりしながら)。鍋ごと冷ました後、保存容器に油ごと移して冷蔵庫へ。

食べるときは、市販のツナ缶より少し粗めにほぐし、浸しているオイルも加えて使ってください。僕の一押しは、このツナにマヨネーズと醤油を足して、海苔&刻みネギをたっぷりのっけた「自家製ツナマヨ丼」!!市販品のツナマヨが想像通りに美味しいとしたら、もっとフレッシュで素材感のある、想像以上の美味しさのはずです。

既製品のツナ缶といえばマグロが主流ですが、カツオを原料としたものも多く作られています。手作りすると、マグロはクセがなく、カツオは魚の風味が比較的しっかりめに仕上がるかと。魚の風味をマイルドにしたい場合はローリエを1枚分ほど、オイル煮するとき加えてみてくださいね。オイルに浸して冷蔵すれば2週間ほど日持ちします。

(c)冨田ただすけ
文・写真/冨田ただすけ

2019年8月1日
アワビ

8月は、子供は夏休み、大人も休みが多い時期ですねー。それに合わせての帰省やら、人が集まって食事することも増える季節です。 皆で食卓をかこむと、自然と「おいしい~」とか「これどこで買ったの?」、なんていう何気ない会話も生まれつつ、「おかえり」とか「おめでとう」、「子供も喜ぶかな」「お酒に合うでしょ」、みたいな、言葉にはしない気持ちのやり取りもあるのがいいなぁと思います。 そんな人が集まる食事の準備をする時には、自分も楽しみながら周りにも楽しんでもらえるように考えたいところ。僕も少なからず料理を作ってもてなすことがありますが、こんな仕事をさせてもらっておきながら、家族以外の誰かに自分の作った料理を食べてもらうことにけっこう緊張するタイプでして…。そんなときの心強い味方が、作り置きできる料理です。 事前に作っておけるものがあると、当日の時間的&心の余裕がうまれます。自分があわてず舞い上がらず、納得するものがきちんと出せること、ここがほんと重要! 前置きが長くなりましたが、8月のテーマは「アワビ」。言うまでもなく高級食材のひとつ。簡単には手を出せないという気持ちは分かりますが、ちょうど夏が旬まっさかりですし、普段食べられないものだからこその食卓での存在感もあり、おもてなしっぽさを出すにはもってこいです。 僕のオススメは、失敗知らず・作り置き可の「蒸しアワビ」。じっくり蒸すことで身はやわらかく、生の刺身よりも味は濃くなり、逆に臭みは感じにくくなり、年代問わず喜ばれる一品に。

アワビは蒸す前に塩を2~3つまみ振ってタワシでごしごし身をこすりましょう。サッと水洗いしてから蒸し器に入るバットや器に移し、アワビ1個に対して酒大さじ1/2ほどを振りかけます。あとは蒸し器で蒸気が立ちのぼる状態をキープし、弱火で2時間蒸す。自然に冷ましてラップをして冷蔵庫に入れておきます。

食べるときはしゃもじなど平たいものを殻と身の間にさし込んで身を外し、身から肝を取り出してそれぞれ食べやすく切ればOK。

彩りよい夏野菜の常備菜と組み合わせれば、当日あわてることなく、もてなせること間違いなし!たまには一緒に食事をしたい人を招いて、腕をふるってみましょう。意外といい夏の思い出になりますよ。

蒸しアワビは冷蔵なら3日ほど日持ちします。料理にボリュームを出したい場合は、たっぷりのアスパラをバターで炒めて、火が通ったタイミングで食べやすく切った蒸しアワビを投入!塩、こしょう、少しの醬油で味付けすると、極上の炒めものができあがります。シンプルな蒸しアワビに炒め物、どちらも甲乙つけがたい…。ちなみに、お重に盛り合わせた常備菜は「みょうがの甘酢漬け」「焼き枝豆」「夏野菜の揚げびたし」の3種です。

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文・写真/冨田ただすけ

2019年7月1日
アジ

テレビでもSNSでも、【ダンナが料理をしなくて…電子レンジの使い方すら危うい】なんていう、料理好きな僕からすればちょっと残念な話題をたびたび目にします。

とはいえ、僕の実家もそんなようなもので、料理をするのは母だけ、父が台所に立つ姿なんてほとんど見たことがありませんでした。

でも、そんな父の唯一の得意料理が、この「なめろう」だったことはよく覚えています。豪快な手つきでアジをたたき、薬味や味噌をぶっこんでさらにたたいて、そのままドーン!と食卓へ。父の作る酒のすすむ肴は子供にも嬉しく、それはそれは美味しいものに感じました。

そう、アジなどの青魚の刺身に、薬味ねぎ、生姜、味噌をたたき合わせるだけのこの料理、普段料理をしない人でも美味しく作れることは検証済み(僕の実家にて)。勢いまかせのようで、その「勢い」が美味しさの軸になっていて、逆に母には真似のできない味だったかもしれません。

なめろうについて、「なぜか美味しくできない…」という質問をもらったことがあります。詳しく聞くと魚の鮮度も薬味の組み合わせも悪からず。じゃあ何なのかと考えてたどり着いたのが、調理中に温度が上がって、魚の生臭さが強く出たんじゃないかと。

刺身は冷蔵庫から出したてを食べるのが普通ですが、まな板の上でたたいて作るなめろうは、気を抜くと食べる時にはぬるくなってしまいます。最高に鮮度のいい魚だってぬるくては美味しさ半減なので、ここは気をつけたいところ。

たたく前のアジをしっかり冷やしておく、手早くたたくということはもちろんですが、【盛り付けるお皿も冷やしておく】という下準備も大切です。

さらにこだわるなら、アジを“さく”の状態で買ってきて、たたく前に「水100ml+塩小さじ1+氷ひとつかみ」でキンキンに冷たい塩水を作り、2分くらい“さく”ごと浸して冷やしてみてください。それをなめろうにすれば、なめらかさと薬味のシャキシャキ感の中に、キンとした冷たさが残り、キレのある美味しさに仕上がります。アジはいまが旬なので、夏の冷酒、あたたかい白ごはん、どちらにもぴったりの一皿をぜひおためしくださいね。

旬のアジは脂がのっていてうま味マックスな美味しさ!なめろうの材料は、刺身100gに薬味ねぎ1~2本、生姜10g、味噌小さじ2ほどを目安に、好みでみょうがや青じそをプラスしてたたいても。また、こだわりの“さく”で作る場合は、血合い骨を抜く必要があるので、買うときに抜いてもらうか、がんばって自分で抜きましょう!

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文・写真/冨田ただすけ

2019年6月1日

この旬シュ瞬!の連載、実は先月からしばし魚介類をテーマにしてみようぜとなったのですが、僕にとっては『新章突入!』というくらいの出来事で、気持ちも新たに気合が入っています。

というのは、魚=外で食べるもの、という話をよく耳にする今日この頃ですが、家庭でも肩の力を抜いて魚料理を楽しんでもらいたいと、魚好きの僕は思っているからです。何故ならシンプルに美味しいから!

今月のテーマである鮎も、和食屋さんの初夏のコース料理では鮎の塩焼きは定番ですし、野外イベントで豪快に串焼きが提供されているのも見たことがあるので、外では食べる機会もあると思います。でも家庭料理としてはあまり馴染みがないのではないかと。日本のいたるところで天然ものが獲れて養殖もされていて、6月くらいからスーパーで普通に買えるところも多いと思うので、一度手に取ってみてくださいね。

僕が家で作る鮎料理でおすすめしたいのが、米2合に鮎2尾を用意して作る炊き込みご飯。人数分の鮎を買って塩焼きにするよりも試しやすいですし、炊き込みご飯なら、天然or養殖というちょっとした素材の違いも、薬味などをうまく合わせることでクリアできちゃいます。

まず買ってきた鮎は、ため水の中で洗って、表面のぬめりを取りましょう。次に、鮎に塩をして魚焼きグリルへ移し、ただただ強火で表面に焼き色がつくまで焼きます。鮎の皮に香ばしさがプラスされるだけで美味しさ5割増しくらいになるので、ひと手間をかける価値あり!

あとは米を研いで水加減して、30分くらい浸水し、醤油、酒、みりんで味つけ。そこへ焼いた鮎をはじめからのっけて炊飯します。

炊きあがったら鮎を一度取り出して頭や骨を箸で除いて身をほぐし、身をもどし入れていただきます。天然の鮎ならワタも全部混ぜ込んでも美味しいですし、養殖の鮎なら大葉や細ネギなどの薬味をたっぷり合わせたり、ちょっとだけコショウをきかせても美味しいのでお好みでどうぞ!

魚を普段からさわらない人には、鮎を“洗う”作業ですらハードルが高いかもしれませんし、“身をほぐす”作業もちょっとひと手間です。でも、たまには素材まるごと触って調理することがあっていいと思いますし、作る時も食べる時も満足感や有難みのようなものがしっかり身にしみて感じられる、どちらも魚料理ならではの良い工程なので、前向きに取り組んでみましょう!

米2合に対する調味料は【醤油大さじ2.5、みりん&酒各小さじ4】。土鍋なら米を研いで水気を一度切って水450mlを加えて30分浸水し、そこに調味料を入れて炊きます。炊飯器なら研いだ米を内釜に入れて水を少なめに30分浸水後、調味料を入れ、最後に目盛りまで水を追加して炊くとよいです。好みで昆布を一切れ入れたり、水の代わりにだし汁を使ったりしても!

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文・写真/冨田ただすけ

2019年5月1日
しらす

「本当に美味しいものは、何日か続けて食べて飽きないもののことだよ」と、社会人になりたてのころ通っていた八百屋の店主さんに力説されたことがあります。

いま、美味しいものについて考える仕事をさせてもらっていて、たまにその言葉を思い出すことがあります。なるほどそれは確かにそうかもしれない。       “美味しい”の基準はいろいろですが、何日か連続で食べれちゃう料理は、その人にとって確実に美味しいものと言えるでしょう。僕の実感としても、一回食べてめちゃくちゃ美味しいものよりも、「昨日も食べたんだよなぁ~」と思いながらも箸がすすむ料理の方が、また作ろってなるし、家族からの評判も良い気がします。今回紹介する“釜揚げしらす丼”は、うちにとって、いまの時期、まさにそんな一品です。

春を迎えてあたたかくなってきた頃からが全国的にしらす漁の時期。獲れたてを漁港近くで茹であげた「釜揚げしらす」は、冷凍でないものが出回るようになり、そのプリン!とした身の口当たりと、臭みのないやわらかな風味は、何とも言えない美味しさ! 冨田家ではスーパーで買うのはもちろん、より新鮮なものをお取り寄せすることもあるのですが、鮮度が良いものは本当に食べ飽きないんですよね。

さて、しらす丼の作り方ですが、ご飯の上に順に乗っけていくだけなので失敗のしようがありません。ひとつ、僕のこだわりがあるとすれば、ご飯の上に少しのカツオ節を散らすこと。丼ぶりいっぱいのご飯を食べるなら、多少味わいに複雑味や変化があった方がいいですし、丼ぶりにはやっぱり「かっこみたい!」くらいのやみつき感があってほしいと思うので。

話がそれましたが、次は、カツオ節の上に釜揚げしらすをドーナツ状に盛り、中央にそっと卵黄をのっけます。刻みねぎや青じそといった薬味が一つでもあれば、見た目も味も、そして作りやすさもふまえて、これ以上ないカンペキな丼ぶりかと。

ちなみに、おかずや丼ぶりなどに卵黄だけを使った時は、献立の汁ものを卵白のみそ汁にすると良いです。卵白に合わせる具材はあるものでいいのですが、油揚げや天かすなど、卵黄の代わりとなるコクの出るものをちょっと加えると、みそ汁の味がまとまってより美味しくなると思いますよ。

茹でたて釜揚げしらすをわざわざ家でちょっとだけ冷凍して、【茹でたて冷蔵品vsその冷凍バージョン】で食べ比べしたことがあります。茹でたてを口にしたときに広がるクセのない良い風味って冷凍すると弱まって、魚のクセや苦味が若干強くなる気がしました。「冷凍しないほうが美味しい!」というのが、僕の舌メーターの判定結果です(比べるとですけどね…)

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2019年4月1日
グリーンピース

豆ご飯だけど、混ぜご飯。もっと言えば、炒めた豆と白ご飯をフライパンの中で混ぜ混ぜってなご飯。今回は4月ということで、料理をこれからはじめる人でも作りやすい、ワンプレートご飯を紹介したいと思います。

4月からは豆の季節でして、絹さやにスナップエンドウ、いんげん豆など、形さまざま緑色あざやかな豆類がスーパーに並びます。

そんな豆類の中で、ぜひ手にとってみてほしいのが、『生のグリーンピース』(和名は実えんどう)。普段は缶詰や冷凍品が使われますが、旬の時期は特別!フレッシュなおいしさが味わえるんです。

スーパーではさやに入っていたり、実だけで売られていたりとさまざまですが、特に実だけのパック売りを買うときは、実から根が出始めたり、乾いてひび割れたりしているものでなく、見た目に新鮮なものを買いましょう。

混ぜご飯には、生のグリーンピースにバター、醤油、塩を使います。冷凍品だとグリーンピースだけの混ぜご飯って味気なくなってしまうけれど、生のものを使うと、グリーンピースだけで十分満足!いや、そのおいしさを味わうには、豆の炊き込みご飯と同様、シンプルにグリーンピースだけ、というのがオススメ。

豆オンリーでOKだから、ピラフやチャーハンなら一緒に炒めてしまうであろう具材は別で炒めておかずにしちゃいます。今回は新じゃがとウィンナーを炒めてワンプレートのおかずに。

新じゃがはくし切りにして、油少々をひいたフライパンでウィンナーと炒めます。弱火でじっくり炒めて、じゃが芋に火が通ればお皿に取り出します。

つぎに、フライパンはそのままで、グリーンピースを入れて2分くらい弱火で炒めましょう。火が通ってきたらバターを加え、塩を軽くふってバターの香りを移します。

ここからがポイントで、最後は火を止めてフライパンの中で仕上げます。あたたかいご飯を入れ、醤油をまわしかけ、しゃもじでざっざっと、粗く混ぜます。【ご飯は炒めず、決して均一に混ぜず!】が僕のお気に入り。このまだらな感じがいいと食べたらきっとわかってもらえるはず!

見た目も明るくてかわいいし、料理ビギナーでも作りやすいので、スタートの多いこの時期、このワンプレートを作って元気になってもらえたらうれしいなぁと思います。

生のグリーンピースと新じゃがは旬の時期が同じなので、ワンプレートに合わせるにはもってこいだと思います。新じゃがには食べる前に塩をふったり、ケチャップそえたりしてどうぞ!混ぜご飯は、茶碗2杯分のご飯に、グリーンピースの実50gくらい、バターは塩入りでいいので10gほど、醤油は小さじ1~1.5くらいでちょうどよい加減になると思いますよ。

(c)冨田ただすけ
文・写真/冨田ただすけ

2019年3月1日
たけのこ

レシピサイト運営という仕事がら、アクセスの変化で季節の移り変わりを感じたりする僕なので、たけのこ関連ページの人気急上昇は春の知らせでもあり、やっぱりみんなこの季節はたけのこを食べたいんだなぁと想像してほっこりさせてもらっています。

そんな人気者のたけのこ、3月くらいから生のものが店頭に並び始め、実は手軽な水煮たけのこも、国産のものは3~4月にピークを迎えるそうです。たしかにこの時期、“新物”というシール付きなどで売り場にたくさん並べられているのを見かけますよね。 新鮮な生のたけのこを茹でて料理できるならそれに越したことはないけれど、今回はより手軽にたけのこ料理を楽しむため、たけのこの水煮を美味しく調理する下処理もあわせて、簡単な春らしいレシピを紹介したいと思います。 「春香る、たけのことあさりの具だくさんスープ」、それではざっと紹介しましょう~。

まず、スープやさっと煮る料理に水煮たけのこを使うときは、中まで味がしみこまず、ちょっとだけ味が薄く(水っぽく)感じちゃうことがあるので、火にかける前のほんのひと手間をかけましょう。

食べやすく切った水煮たけのこをバットなどに並べ、醤油と水をスプーン1杯ずつかけて5分ほど味をなじませます。たったこれだけですが、出来上がりのたけのこの味わいにグッと差がでます。これくらいならやってもよくないですか??

下処理ができたら、鍋にあさりを入れ、かぶるくらいの水と酒少々を入れて火にかけます。火が通って口が開いたら、あさりを取り出しましょう。汁だけになったところへ、汁気を切ったたけのこを加えて醤油で汁に味付けし、最後にあさりを戻し入れてあたためれば出来上がり。

スープの味わいを濃くするために汁量は控えめで、具だくさんのおかず汁といった感覚で作ってみてください。

たけのこって何に合わせても特有の食感と香りで「オレここにいるぜ」とその存在感を伝えてくれるし、かといって、春の山菜のように個性が強すぎるわけじゃないから他の食材とも合わせやすい。つまり、「存在感あるから主役もはれるけど、個性が強すぎない」という、抜群のバランス感覚をもった、もう名俳優のような食材だ!と思うのです。

参考までに2人分をレシピ化しますと、、水煮たけのこ100gとあさり200gが具材の目安で、そこに合わせるのは水200ml、酒50ml、最後の味付けの醬油は小さじ1ほどになります。あさりの旨みを引き出すため、必ず水からあさりを入れて火にかけましょう!あさりを取り出した後は、アクが出ていればお玉で軽くすくい取ってから、たけのこを入れるとよいですよ。

(c)冨田ただすけ
文・写真/冨田ただすけ

2019年2月1日
菜の花

本やWebで「〇〇2・0」みたいなワードを見かけたこと、ありますよね。お金2・0とか、マーケティング4・0とか。数が増えるにつれてその考え方などをアップデートしてるっていう意味なんですよね。

僕の料理も日々まさに更新中で、以前のレシピをふり返ると「この頃はまだこのやり方だったか…」と思うことがざらにあります。今月の菜の花を使った料理も、たぶん菜の花レシピ3・0くらいかな(笑)

さて、僕の菜の花料理で何が変わったかというと、「ゆで汁の美味しさに気づいた」ということがいちばん大きいと思います。料理屋で教えてもらった菜の花のお浸しは一番だしを使って作るけれど、いまの僕は菜の花のゆで汁を冷まして、それをだし汁替わりに使っています。昆布だしのようなやさしい旨みがある菜の花のゆで汁を「料理に使わない手はない!」と気づいちゃったんです。

今回紹介する雑炊でも、菜の花を直入れするからこその美味しさがあります。まずは、菜の花を1~2cm幅に切って(穂先はバラバラになってしまうので切らないように)、細く切った油あげ、ジャコ、卵も用意しましょう。

菜の花は、茎の太さのわりにすぐに火が通るので最後のほうに入れます。水が沸いてからはじめに入れるのは、油あげ、ジャコ、ごはん。ごはんがほぐれたら醤油、みりん、塩で味を調えます。

再沸騰したら菜の花を入れてお玉でさっと混ぜ、30秒ほどくつくつと加熱します。続けて、溶き卵をまわし入れ、少し間をおいてから全体を混ぜれば完成。雑炊は時間をおくと米が水気を吸うので、出来たてを早めにいただきましょう!

ちなみに、雑炊に加える温かいごはんは、入れる前にさっと流水で洗って表面のぬめりを落とすと、仕上がりが比較的さらっとなるので好みでやってみてください。

土鍋で作った熱々の雑炊に、シャキシャキの冷えた大根やカブの漬物。温度と食感のコントラストがばっちり決まったこの組み合わせが個人的に大好きで、寒い時期の献立としてはかなり秀逸だと思ってます。実は冨田家では「今日の晩ごはんは雑炊だよ~」はかなりメジャーなことなのです。

おおよその目安はたっぷり1人分で、ごはん軽く茶碗1杯分に水300ml、菜の花50g、ジャコ10g、油あげ1/4枚、卵1個、調味料は醤油とみりん各小さじ1、塩が小さじ1/6くらい(好みでこしょう少々)。適宜増やして作ってみてくださいね。土鍋で雑炊やおかゆを作るってことは、土鍋の貫入に糊となる米が入って割れにくくなるって勝手に信じてます。

(c)冨田ただすけ
文・写真/冨田ただすけ

2019年1月1日
ゆず

スコープさんにこの連載の話をいただき、シャチョウさんに「旬、シュ瞬!」という、かっこいい連載タイトルをつけてもらってから、なんとか、旬の食材が家庭料理にいかされるところを切り取ったようなものが書きたいなぁと思うのですが、本当にむずかしく、毎回悩みます。

そんな僕が季節の料理を考えるとき、いつも頭をよぎり、憧れてしまうのが、辰巳浜子さんの『料理歳時記』というエッセイに書かれているような、食材との距離感や向きあい方です。こんな風に食材をくまなく観察し、大事にし、楽しみきれたら、料理は自然と上達していくのだろうと思います。この本は、大学生の頃に手にとってから、ボロボロになるまでなんども読み返していて、日本の家庭料理ってどんだけかっこいいんだ!と僕に気づかせてくれた本です。

今回のテーマの“ゆず”について、料理歳時記には、「年を越すと中身の汁が日に日に減って、薄皮や綿がポッタリしてきます。…こんな状態になったゆずが最高に美味しい」とあります。これを読んだ20代の僕は、それを実際に確かめて、「なるほどなぁ~」と一人頷き、自分の経験として取り込めたことを喜んだりしてたんですよね。

年末から手に入る黄ゆずは、本にも書かれている通り、寒さが本格化した年明けくらいからしっかりと熟して皮までも柔らかくなってきます。ちょうど鍋を囲む回数も増える季節ですから、オススメしたいのは、果汁→自家製ポン酢醤油、しぼった後の実→速攻で砂糖和え、という使い方です。

手順としては、はじめに果汁をしぼってポン酢醤油を作ります。自家製○○というと難しい感じがするかもしれませんが、すごく簡単。ゆず2個分の果汁をしぼり、少し酸味を足すために酢大さじ1を加えたら、あとは醤油を大さじ5、鰹節の小袋を1~2袋分沈めるだけ。

しぼった後のゆずは、種だけは丁寧に除いてあとは細切りにします。ゆず2個に対して砂糖大さじ3を混ぜ合わせ、ねっとりとしてくれば完成です。個人的にはあっさりした甘味のグラニュー糖を合わせるのが好きですね。

出来上がったポン酢醤油は冷蔵庫で1時間くらい寝かせてから上澄みを使うようにして、砂糖和えは箸休めや飲み物などいろいろと使ってみてください。食材を丸ごと使い切った満足感も味わえますよ。

年を越したゆずの果汁は減ってくるといっても、ポン酢に使えないほど果汁がないわけじゃないのでご安心を。それから、ポン酢に入れた鰹節は、数日経ってからしっかりしぼっておくと後々使いやすいです。冷蔵庫保存すれば今期の鍋シーズンの間はずっと使えますので、ぜひまとめて作っちゃいましょう!

(c)冨田ただすけ
文・写真/冨田ただすけ

2018年12月1日
水菜

料理屋で働いていたのは、もう10年以上も前ですが、いまでもたまにリアルな夢を見ます。下っ端として、とにかく仕事に追い回される、ちょっと冷や汗をかくような…。おぉ、夢だったって起きるんです(笑)

この頃の経験がなければ、いまの仕事はできていないと言い切れるほど、たくさんのことを勉強させていただいた時期なのですが、濃密すぎたからこそ、いまだに夢にみるんでしょうね。素材の下ごしらえ一つ一つも、あのときはどうしてたかな、と思い返すことが多いです。

例えば、冬が旬の水菜。下処理で注意したいのは、他の青菜よりも葉や根元に土が残りやすいところ。ため水の中でふり洗いするのが、料理屋のころから変わらぬ僕のやり方になっています。

冬の青菜には、ほうれん草や小松菜もありますが、アクの少ない水菜はどんな料理にも合わせやすく、その当時も登場回数が多かったように思います。料理に合わせて水菜を蒸すのも僕の係で、色味を残す絶妙な蒸し加減で出すために、進行具合から逆算して、ここぞってときに蒸し器に放り込んでたなぁ。

今回はそんな水菜と豚しゃぶ肉を合わせます。火の通りやすさが同じくらいの2つの素材をシンプルに蒸して楽しむ簡単おかずです。“蒸す”という言葉を聞いて、「あーじゃあムリだ」と思ったあなた!蒸し器を使うのは一つの方法であって、フライパンを使っても作れるので、あきらめないでくださいね。

さて、はじめに蒸し器や蒸籠での作り方から。切った水菜をお皿に広げ、豚しゃぶ肉を上に広げます。肉に軽く塩・こしょうをして水菜を少し足し入れたら、酒、ごま油、すりごまを少量ずつ回しかけて蒸します。蒸し時間は4~5分が目安。豚肉の色が変わるころには水菜も食べごろになっています。熱々にポン酢をかけていただきましょう!

より手軽に作りたいときは、お皿の時と同じように、直にフライパンに素材を広げ入れ、ごま油とすりごまをかけます。違うのは酒の分量だけ。蒸し器じゃないので、フライパンの中に蒸気となる水分を入れておく必要があるわけです。大さじ2~3ほどの酒を入れて蓋をして中火にかけ、沸いたら火を弱め、火が通るまで酒蒸しすれば完成です。道具が違えば少しは味が変わってきますが、それもまたおうちの味になってくれるんですよね。

今回の蒸籠蒸し1皿には、水菜100gに豚しゃぶ肉50g、酒とごま油、すりごまを小さじ1ずつ入れて作っています。フライパンで作ると水分が多い分くたっと、蒸し器だと比較的シャキッと仕上がります。すだちや柚子、橙といった柑橘類があれば、ギュッとしぼりかけたあとに醤油少々でも美味しいですよ。

(c)冨田ただすけ
文・写真/冨田ただすけ

2018年11月1日
自然薯

ある料理雑誌の編集の方とお話したとき、「うちの調査結果だと、すり鉢って持っていない人も多いみたいで…」という話題になったことがあります。

「マジっすか?」と聞き直したあと、しばし絶句してしまったほど衝撃を受けた僕ですが、ここで声を大にして言いたい。和食作りにすり鉢は超便利なのだ!と。

すり鉢には、食材をする(下ごしらえ)、すったものと何かを混ぜる(調理)、そのまま食卓にドーンと出す(盛り付け)、という台所から食卓までの流れを一手に引き受けてくれる万能さがあるのです。

あと、個人的には、すり鉢とすりこ木でごろごろすっていると、ちょっとだけ心が休まるような気がして好きです。同じ作業の繰り返しなのですが、すりこ木から手に伝わる感触も「作っている!」という実感をもたせてくれるんですよね。

さて、今月の食材の「自然薯」、長芋とはひとあじ違う粘りと濃い味わいが楽しめるので、とろろかけご飯が最高に美味しいわけですが、テレビを見ながら、もしくはちょっとボヤっと考え事しながらでも手を動かし、それで美味しくなるんだからいいよなぁ、とすり鉢料理の優秀さをつくづく感じます。

11月くらいから全国で流通し始める自然薯は、最近では天然もの以外に栽培もさかんに行われているので、手に入りやすくなったと感じている人も多いのではないでしょうか。

自然薯の下処理としては、まず土を洗い落として、水気をふき取ってから直火でさっとあぶってひげ根を燃やしましょう。ひげ根だけはすり鉢でもつぶせないので、ここはポイントです。

ひげ根さえなくなれば、皮ごとでよいのですりおろします(気長にすり鉢に自然薯を当ててすりおろしてもいいですが、ものによって皮が残りやすくなるので、おろし金で一度すりおろし、後からすり鉢でするのがおすすめです)。

粘りが強いので分離しないよう少しずつ、だし汁と醤油、好みで溶き卵なんかも加え、ごろごろごろとすって仕上げます。

さあ、熱々のご飯の用意ができたら、すり鉢ごと食卓に。しぶめの食卓で絵になるのは間違いなし、言わずもがな、しみじみと美味しい!

うちでは、ごろごろすり係として娘を任命したりするのですが、食べるとき、「だしがきいてうまいねぇ」などと、作ったからこそ分かる味わい方をしていて面白かったりもします。

今回はとろろ大好きなうちの娘が自然薯をすっているところのワンカット。なかなか手つきも様になってきています。すった自然薯に加えるのは、自然薯250gに対して、だし汁100ml、醤油大さじ1、溶き卵1/2個分くらいが目安かと。醤油は普通の醬油でもいいですが、あれば淡い色合いの薄口醤油がおすすめです。好みで青のりやわさびを添えてどうぞ!

(c)冨田ただすけ
文・写真/冨田ただすけ

2018年10月1日
マッシュルーム

「この野菜、生で食べてもおいしいよ!」なんていう謳い文句にのっかって試してみたけれど、「生でも食べられるけどやっぱり加熱した方が食べやすくない?」という感想に落ち着いたことが何度かあります…。

でもマッシュルームはちがった!はじめて新鮮なものを生で食べてみたときには、ちょっとおどろいたくらい、食べやすくて味わい深い。

今回紹介する和え物は、生のマッシュルームと三つ葉を合わせるだけのもので、切ったそばから出来上がっていくような楽しさのある、手軽な一品です。

自分で言うのもなんだけれど、ちゃちゃっと料理のわりにちゃんと美味しい。そして盛り付けたときのまとまりの良さというか、派手さはないけどなんだか可愛い感じがいいんです。サラダっぽくハムなんかに添えても合うし、こんなおつまみがパッと出せたら格好いいかもしれない!

新鮮なマッシュルームは、生だからこその軽やかな食感とフレッシュで自然な旨味が味わえます。そこに三つ葉の軸だけを刻んで合わせるのが、お店っぽいひと工夫になるかと。味と食感、盛り付けたときのアクセントとしても、きらりとひかってきます。

さて、秋の食卓に引っ張りだこのきのこ達ですが、そのきのこコーナーの新顔といえば、かわいらしい形のマッシュルーム。

マッシュルームはホワイト種とブラウン種、色違いの二種類がよく売られていて、食べ比べるとブラウン種のほうが風味が少し濃厚な気がします。でも、そんなに大きな違いではないと思うので、あとはもう気分で選んじゃいましょう。

すべてのきのこと同じく、マッシュルームも、表面に傷や変色がなく、切り口のきれいなものを選びます。鮮度のよいものは生で食べてもおいしいということを知っておくだけでも、手に取りやすくなりますよね。

そしてここから手順を。食べる直前にマッシュルームを食べやすい幅に切る、三つ葉の根元を切り落として軸だけを細かく刻む、その2つを合わせたところに、オリーブオイル、醤油、こしょうで味付けする、これだけです。

気を付けることと言えば、マッシュルームは新鮮なものを使うということと、水洗いせず、気になればキッチンペーパーなどで汚れをはたいて落とすようにすることくらい。水洗いしてしまうと、仕上がりが水っぽくなってしまいます。

加熱しないからこその簡単さと美味しさがダブルでうれしいこの料理、きっと、もう一口もう一口と、知らぬ間に箸がすすんでくれるはずです。

ちなみに今回はホワイトマッシュルーム6個に、オリーブオイル小さじ2と醤油小さじ1くらいを合わせました(三つ葉やこしょうはおおよそでOK!)。醤油の代わりにポン酢を使っても美味しいですよー。

(c)冨田ただすけ
文・写真/冨田ただすけ

2018年9月1日
みょうが

いまから16年ほど前、社会人になった僕は、縁もゆかりもない土地で暮らしはじめたこともあって(もともとインドア派だったのが)かなりしっかりめの出不精になっていました…。

当時の休日の楽しみといえば、料理とベランダ菜園。料理するなら薬味くらい自分で育てなきゃと、はじめてのベランダ菜園に挑戦したのもこの頃です。ただ、ベランダ菜園のトップバッターに「みょうが」を選んだ時点でけっこうな変わった20代男子だったかもしれません…。

みょうがを育ててみて、「みょうがって土の中から出てくるんだ」と、新鮮な発見もあったのですが、ベランダの一角を占領するほど予想外に大きく育ち、一人では食べきれない量のみょうががとれた時には、嬉しい反面、どう食べるか、正直頭を悩ませました。

さて、夏のイメージが強いみょうがですが、実は夏のものは少し小ぶりで、9月くらいから、大きく丸みをおびてきたものが土から顔を出しはじめます。 スーパーでみょうがを選ぶときは、先端や切り口にみずみずしさのある、ぷっくり丸々としたものを選ぶとよいですね。と、まぁ、みょうがの目利き的なことを紹介したものの、いくらいいものを買っても1個だけ薬味で使って、残りを冷蔵庫でほったらかしにしちゃあいけません!みょうがはけっこう足が早い。買ってきたらそれを覚えているうちに、パパッと使っちゃった方がいいんです。

若かりし頃のベランダ菜園のおかげで、僕のみょうが偏差値がいっきにアップしたこともあり、簡単なレシピはおてのもの。意外かもしれないですが、みょうがは火を通して食べると手軽でたくさん食べられます。今回はただ焼くだけの一皿を紹介します。フライパンに油を多めに入れ、縦半分に切ったみょうがを、切り口を下にして並べて2、3分焼きます。裏返さず、切り口に軽く焼き色がつけば、お皿に。あとはお皿の上で味付けをします。

ひとつ、みょうがの盛り付けにだけポイントがあって、調味料が中にしみ込みやすいように切り口を必ず上にしましょう。そこに砂糖を薄くふりかけ、酢と醤油を同量まわしかければOKです。最後に、かつお節とごまをたっぷり!みょうがの個数はあまり関係のないレシピなので、少量でもまとめてでも、ぜひ一度みょうがを焼くことをやってみてください。このステップを踏めば、あなたのみょうが偏差値もきっとアップするはずです!

(c)冨田ただすけ
文・写真/冨田ただすけ

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